序章 ― 錬金術という夢、そして現代へ
人類は古来より「鉛を黄金に変える」という夢を抱いてきました。
それは単なる物質的な欲望の物語ではなく、魂そのものの変容を象徴する営みでもあったのです。
鉛とは重く、濁り、未完成なもの。
黄金とは、永遠性を帯び、輝き、純化されたもの。
錬金術師たちが追い求めた「賢者の石」とは、物質を超えて魂の奥深くに眠る可能性を呼び覚ます象徴だったのではないでしょうか。
14世紀パリに生きたニコラ・フラメルは、その象徴の最たる人物です。彼は伝承の中で「不老不死を手にした錬金術師」と語られ、今なお世界の想像力を刺激し続けています。歴史的に真実であったかは定かではありません。けれども、「魂は変容できる」という物語を彼は私たちに残したのです。
そして現代。
錬金術の夢は化学の言葉へと姿を変え、神経科学・分子化学・心理学といった分野で再解釈されています。鉛のように重く沈む心が、化学的・精神的変化によって黄金のような輝きを取り戻す―これこそが「魂の黄金変換」の本質なのです。