第6章 現代科学におけるホリスティック
6.1 部分から全体への科学の転換
近代科学は「分解」を得意としてきた。
ニュートン力学は自然を因果の機械として描き、近代医学は人体を臓器・細胞に分割して理解した。
しかし20世紀以降、量子論・相対論・システム論の登場によって、科学そのものが「全体性」を無視できなくなっている。
科学は今、部分を超えたホリスティックな認識に向かいつつある。
6.2 量子論に現れる全体性
量子力学における「重ね合わせ」「非局所性」は、部分と部分が切り離せないことを示している。
一つの粒子の状態は、観測する者や環境全体との関係に依存する。
つまり量子世界では、存在そのものがホリスティックな場に包まれている。
「観測されるときにのみ現れる」という現象は、魂(意識)と知(理論)が音(波動関数)を介して交錯する場そのものを指し示している。
6.3 脳科学と共鳴
脳もまたホリスティックな系である。
- 脳波は周波数(デルタ波、アルファ波、ガンマ波…)として測定でき、音のようなリズムを刻む。
- シナプスの発火は個々の神経細胞に還元できず、ネットワーク全体のパターンとして働く。
- 感情(魂)と認知(知)は、脳内で切り離せない重なりを持ち、音楽や言語を通じて統合される。
科学的に見ても、人間の心は「共鳴する場」として理解されつつある。
6.4 宇宙論と音の原理
宇宙論では、ビッグバン直後の「宇宙背景放射」が、宇宙の最初の「音」として記録されている。
銀河の分布や星の形成も、音波のゆらぎから生まれた。
つまり、宇宙の進化は音楽的構造を帯びており、物理学そのものが「宇宙の交響曲」を解き明かす試みといえる。
6.5 科学のホリスティック的収束
現代科学は分解の果てに、再び「全体性」に出会った。
- 量子論は「不可分の場」を、
- 脳科学は「共鳴するネットワーク」を、
- 宇宙論は「音楽的宇宙」を示した。
それは、知(理論)と魂(人間的感受性)が音(振動・共鳴)を介して統合されるという、ホリスティックの原理そのものだった。
6.6 次章への展望
科学はホリスティックを「理論」として示した。
では、私たち個人はそれをどう生きるのか。
次章では「ホリスティックな生き方と実践」を取り上げ、日常のリズム・音・感情・知識をどのように統合できるかを考察する。