――ホリスティックとは何か:知と魂と音の統合原理――
序章 全体の響きとしての人間と宇宙
私たちの世界は、部分の寄せ集めとしてではなく、もともと全体として在る。人間もまた、身体・心・知識・感情といった断片の和に還元できるものではない。全体は部分に分解できない力を持ち、そこから新しい意味や創造が生まれる。これを「ホリスティック(holistic)」と呼ぶ。
ホリスティックという言葉は「全体」「完全性」を意味するギリシア語 holos に由来する。その概念の根幹は、分断された視点を超えて、知と魂を同じ場に置き、さらにその媒介として「音」を統合原理に据えることにある。
音とは、単なる物理的振動ではなく、共鳴・リズム・間(ま)をも含む原理である。音は言葉となり、数式となり、また祈りや歌声となって、知と魂のあいだを往還する。もしも知が論理を、魂が感情を担うのだとすれば、音は両者を結び、超える「橋」となる。
序章において私が提示したいのは、ホリスティックな理解とは単なる「統合」ではなく、あらかじめ全体として響いている宇宙に、人間が自らの知と魂を同調させていく過程であるという視点である。部分を合わせて全体を作るのではなく、全体のなかにすでに含まれる「響き」を聴き取ること。ここにホリスティックの核心がある。
次章以降では、この全体の響きがどのように現れるかを考察する。まずは「知と魂の二重らせん」という構造から始め、そこに「音」がどのような形で介在するのかを追い、さらに数学的モデルや芸術的表現を通して、その普遍性を確かめていきたい。